歓喜の歌が聞こえてくるよ。

浦和の補強が素晴らしい。この厳冬にこのストーブリーグの暑さはなんだろう。弱体ヴェルディで昨シーズン唯一気を吐いた生粋のストライカーワシントンの獲得を皮切りに、元代表のFW黒部、この層の薄さで代表に呼ばない方の目が節穴だという評価も一部にはあるかもしれないほどの高い技術力を持つ左サイドのスペシャリスト相馬、トドメにレッズが世界に送り出した至宝小野伸二の復帰が昨日決まった。様々な方面にオファーを出してたようだけど、結局小野伸二の3年契約でクローズ宣言したようだ。宣言がでて、ほっとしてる球団も幾つもあるかもしれない。

この補強を見てると、今までの浦和とは一味違うな、ということが一目瞭然で分かる。まず、これは来年が良ければ、ていう場当たりな補強ではない。年齢的にもまだまだやれる、一定のレベル以上の選手をしっかり獲っている。誰かが抜けたり故障したりしたら何時でもあたふたして、あわてて変な買い物をしてしまうかつての浦和フロントとは明らかに違う。豪華ではあるけど、地に脚がついてるし、理にかなってる。FWが分厚い気はするけど、まぁ田中達也の復調がまだというのを考えると、黒部というオプションをレンタルで試す、というのは、悪くない選択肢ではある。

重要なのは、この補強で「誰が出れなくなる」とかそういう遠慮をクラブ側が一切してないことだ。今までの浦和だと、何人も補強すると、試合に出れなくなるからとモチベーションを落とし、中にはチームを去っていく選手もいた。ところが今は違う。小野、ポンテに続き、3人目のゲームメーカーとなる長谷部は「学べることが沢山ある。競争上等。」とばかりに気をはき、五輪代表では小野にポジションを埋められる形で落選した鈴木啓太も小野の復帰を歓迎してる。そして、今のところレギュラーを確約されたチームを去る気配の選手はでてきていない。「誰かが出られなくなっちゃう」とサポーターの多くは心配してるぽいけど、そんなサポーターの心配を他所に、選手はやってやろうじゃないか、と腹を括っているのだ。実に、健全な競争意識がチームの中に根付いている。しかもそれが、若手からベテランまで(かつてエメにポジションを奪われチームを去った岡野まで!)浸透してるのだ。

それは昨シーズンのレッズが、多くのサブや新人の活躍で結果を残してきたことへの信頼もあるんだろう。例えば、天皇杯で先制し、1失点に守り抜いたのは、闘莉王、内舘のサブだった堀之内。圧倒的な運動量で黒子に徹しながらチームの心臓となっている鈴木啓太の穴を埋めた、彼も元日本代表そして小野の同期、酒井。不慣れなストッパーを3試合こなしきった脅威のルーキー細貝。都築の突然のケガのアクシデントを埋めたGK山岸、右サイドの起用にこたえたベテラン岡野……挙げればキリがない。こういう起用をしっかりして、評価してきたギド・ブッフバルトの功績は計り知れない。彼の紳士かつ真摯な振る舞いは、自然とチームにプロ意識を植え付けた。今思うと、去年2人の主力選手が突然にチームを去ったことも、このチームが本当の意味でプロになるための、重要なステップだったのかもしれない。

さて、まず相馬はW杯に出るために、真剣にアレックスのポジションを狙ってくることだろう。代表でポジションがほぼ確約されてるも、時たま眠ることのあるアレも、これで目が醒めてくれるに違いない。眠ったままなら相馬に明け渡すまでだ。しかも平川という俊足SBもレッズにはいる。黒部も結果を残し、レンタルの身分から完全移籍を狙ってくることだろう。そのためには、田中、ワシントン、永井という並み居るFW陣を差し置いて結果を出すしかないし、そうなると実績のあるFW陣もやはりうかうかしていられない。そんな攻撃陣を操舵するのが、もう日本一と言って良いだろう分厚い中盤。キャプテンの元日本代表山田暢久ですら、このままじゃレギュラーの確約がないという状況。しかも赤星、細貝という新人の成長も著しい。攻撃センスの溢れる選手もいれば、守備に汗を流せる選手も揃っている。ギドならきっと、彼らを成長させながら競争させ組み合わせ、更なるレベルアップができるだろう。そして何せ、中心にはサッカーの申し子、小野がいるのだ。仮に数年後、小野が去っても、その後には、小野に育てられた精鋭たちが揃うことになる。3年契約の小野は海外に旅立つ際には、大量の移籍金を残してくれるだろうし、それがチームを強くする原資としてまた役立つ。ここまで計算されているのだから、ビッグクラブへの道、着々という感じだ。しかも、このチームが経営で親会社からほぼ独立してるてのも驚きだ。同じ潤沢補強でも、親の電気メーカーに頼っているであろう西の雄とは違う。エメルソンが残した大量の移籍金は、サッカーでビジネスをやる方法てのをしっかり浦和に教えてくれたのかもしれない。学習している。勿論、埼玉スタジアム60,000のサポーターが一番の原資であることは言うまでもないけれど。

……。……。

まぁそんなこんな。長々と書いたけど、僕が小野の移籍にふと思うのは、浦和は、ジーコが投げ出した「若手の育成」という役割を、Jリーグのど真ん中で塞栓して引き受けようとしてるんじゃないか、てこと。アテネ世代、さらにアテネより下の世代はなかなか結果を残せていないし、代表に入ってる選手もほんの数名。けど浦和は、アテネ世代以下を中心とした若いチーム。達也、闘莉王、長谷部等々、代表予備軍も多く抱えている。彼らが「世界」を肌で経験するには、世界でプレイ経験のある選手に、若いうちから接することが一番の早道。けど代表ではなかなか経験つめない。だったらチームでそれを知ればいいんだ。

ばたばたした経緯だったんで、小野伸二が戻ってくることに賛否はあるみたいだけど、少なくともマイナスになることなんてないと僕は思ってる。とゆうか、世界のトップで戦ってた良い選手が来るんだ。なんでマイナスになる?一時的に誰か出れないレギュラークラス選手は出てくるかもしれない。けど、それが彼のためにならないだなんて、数年後になってみないと分からない。今仮に試合に出れなくても、数年後には、世界を肌で感じたトッププレイヤーに成長してるかもしれないのだ。小野伸二が、彼と競争し、彼に何かを与えることで、彼を育てるのだ。そして小野と彼の関係は、未来の日本代表のホットラインへと繋がってくかもしれないのだ。

そんなこんなで、先ずはACL、躍進するチームの姿がみたい。そのためにも、06年シーズンの戦いは重要なものになろう。間違いなく追う立場から追われる立場になる。けど、やはり普通に考えれば、小野、長谷部、ポンテという中盤をパーフェクトに止められるチームなんて、全然思いつけない。05年の反省をフルに生かした新体制、プレッシャーすら楽しみに変える底力があると、信じて止まないレッズサポが、ここにもひとり。