「うた魂♪」全肯定!

うた魂♪」観てきました。
http://www.utatama.com/

ぶっちゃけ最初に合唱映画化ときいて、しかもゴリが主演ときいたときには、ロクでもないものができるだろうとたかをくくってましたが、いや、面白かった。全肯定です。

マイノリティな文化を青春映画のフォーマットにあてはめるという手法は「ウォーターボーイズ」のヒット以降すっかり確立した感はありますが、それとはまた別の流れがここに混じった印象が、うた魂♪をみるとあります。ガチなんだけど、ガチじゃない。茶化した感じと、何処か突き放した感じの絶妙なバランス。キャラクターづくりの徹底。マンガ的手法・言語的解説の多用。妄想家で、道化的な主人公。このあたりに、のだめ的な匂いを濃く感じます。

プロットはスウイングガールズ、ディテイルはのだめカンタービレ。 こんな要素を実にうまく融合させたのが「うた魂♪」という印象を受けるわけです。結果、想像以上にきちんとして明快な作品が出来上がったと思います。合唱人からの支持も、これならちゃんと得られるんじゃないでしょうかね。心ある合唱人なら。僕が心ある合唱人かは、かなり微妙ですが。

ともあれ、自分は心ある合唱人かもと思う人には一見をおススメします。

てゆうかもう、単純に「合唱顔」*1な女の子たちがマジに眼に涙をためてキラキラ歌ってる様をみたら否定できるわけないでしょ。そういうのをみて育ってきちゃったんだから。主人公も含め、よくもあれだけ「合唱顔」をそろえられたもんだと思います。グッとくるものはあります。

というわけで、下に理屈っぽいことをぐだぐだ書くので、読みたい人だけ読んでください。

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徹底的にキャラクターを重視してこういうコメディ映画をとると、結果的にリアリティが増すという不思議があります。例えば、「リリィ・シュシュのすべて」という岩井俊二のガチなフィルムに、合唱が重要なモチーフとして用いられてるわけですが、あれは描写がファンタジックでリアリティはほとんどない。対して、「うた魂♪」では、マイノリティとしての合唱をきちんとコミカルに描くことで、本質的な部分をあぶりだしているわけですね。のだめがオーケストラのそれをあぶりだしたのと構造的には一緒です。

ただ、「うた魂♪」が秀逸なのは外部からの視線を分かりやすく冒頭から入れ込んでることです。

「合唱って、なんだか傍からみてると理解できない。」

一言でいうとそういう視点です。

そういう醒めた視点、いわば「マイノリティを見下ろす視点」をきちんと導入しつつ、それでも、合唱、というか歌ってのはエンターテインメントなんだということを伝えようとしているわけです。 *2うた魂♪」というジュブナイルは、主人公がそのような視点、「自分は傍からみて変人に見える」という視点を理解することから成長していくという構図を持ってます。これは興味深い。小さい子供は鏡に映る自分が自分自身であることを認識したときにはじめて自己と世界を切り離して考え、それが精神的な成長の第一歩になるというのは、ラカンあたりのむつかしい心理学で良く言われるお話ですがつまりはそういうことなわけです。

その成長のキーになるのがゴリ演じる権藤のあの言葉なわけですね。言ってること自体は普遍的で、あらゆるエンターテインメントに必要とされるであろうことです。実にいいタイミングででてきて、しかもちゃんと茶化しつつ伝えてるのでまったく嫌みはありません。

他にも、選曲、特に尾崎豊の使われ方とか、色々考えたい材料は多いフィルムなんですが、さすがに長文になるものうざいので今日はここまで。

まぁとかなんとか言いつつ、実は一番語りたいのは「合唱顔」についてなんですけどね。



*1:あか抜けない雰囲気、文化系の匂い、偏差値は高めな感じ、気位高い雰囲気と温和な雰囲気に二分されがち。基本黒髪。制服はきちんと着てる。などなど要素は多々。

*2:のだめの場合は、こういう「見下ろす」視点は変人をそろえることで結果的には伝わるものの、直接的には描写されません。「変人=アーティスト=天才」として処理されます。