燃え尽きた赤。

赤が負けたそのとき、僕は日産スタジアムにいた。目の前で悲しみを味わった。まさかとは思ったけど、よくよく冷静に考えると、ここ数試合の流れをみてると十二分に有り得ることだった。僕らはもっと、浦和レッズの迎えたこの惨劇への「覚悟」を持っていくべきだったのだ。きっと。

敗因は「燃え尽き」だろう、と思うなぁ。僕は燃え尽きに関してはある種の権威で(笑)27年間奴と付き合ってきたので、奴の厄介さはよーくわかる。

何かを追いかける。それを掴んで形にしたとたん、自分が何を追いかけていたのか、そして次に何を追いかけるべきかが、頭では分かっても体が分からなくなって混乱してパフォーマンスが落ちる。これが僕の言う「燃え尽き」の定義。医学的に正しいのかは知らんけど。

だからまぁ全ての敗因は、気持にハリのあったACL決勝の前に、更に勝ち点の積み上げができなかったことにあると思う。采配がどうのとか怪我人がどうの、だけではなく。

浦和は唯一「勝つ」ことを求められたチームになってる。てゆうか、オジェックがそういうサッカーに徹してきた。ACLに勝ったとき、選手たちは目的を見失ったんだと思う。サポーターは貪欲だから、「リーグも!天皇杯も!トヨタ杯も!」って思うけど、実際やってる方にしてみると、燃え尽きのときにそれを求められるのは結構重荷なんじゃなかろうか。

オジェックの弊害というのはまさしくそこにあると思う。彼は優秀なコーチだとは思う。だけど、モチベーションが「勝つ」ことのみになってしまうと、何かが達成されたタイミングで気持ちがゼロリセットされちゃう。仕事とかもそうじゃないですか。それって僕だけ?

動画インタビューで、阿部や啓太の明らかに泳いだ視線をみてみると、あながちそれが間違いじゃない気がしてくる。ドイツの豪州戦敗戦のあとの宮本をみるようだ。
http://www.jsgoal.jp/news/00057000/00057967.html
http://www.jsgoal.jp/news/00057000/00057962.html

コメントをきいても、彼らは混乱している。あれだけクレバーな選手だって混乱してるんだ。チーム状況がどういう感じか、想像するに難くない。

だって、「勝つ」ことを求めてきたチームが「勝てない」んだから。唯一のモチベーションすら持てない状況。下手したら空中分解の危険だってあるよねこれ。相当まずいよ。オジェックがいまさら選手の健闘をたたえようが、そんなものはなんの慰みにもなるまい。

ほぼ唯一、コメントとプレイで男気を見せているのは、長谷部だ。彼は、強いな、と思う。少なくとも現状を受け入れているし、何より、利己的なコメントではない。何気に、器が一回り違うという感じさえする。

浦和が本当に世界のトップに肩を並べても恥ずかしくないチームに成長するには、彼のもつような強さが必要なんだと思う。てゆうか、こいう選手じゃないと、あのサポーターを前に勝利を約束されるプレッシャーに打ち勝てないよね、きっと。

おそらくだけど、このままずるずるいくと、来期非常に厳しい結果が待ってると思う。クラブW杯でよっぽどいい結果出せれば別だけど、今の状況みるとそれは期待できない。ポストシーズンの過ごし方がポイントになってくる。ほとんどゼロからチームを組みあげてくくらいの覚悟がないと、空中分解してくんじゃないかな。

そのためには、長谷部が必要だと思うんだよな。私見だけど。本当の話、J優勝決めて、海外で武者修行してきてほしかったんだけど、どうもチーム状況がそれを許してくれない気もする。本人も相当悔しがってるっぽいし。

ここ数試合のサポーターの反応をみても思うところはあった。どうこうとは言わないけど、レッズサポーターにはいつだって「粋」でいてもらいたいし、そこで「粋」が感じられるからこそしょっちゅうゲームオープニングで僕は号泣してる。発煙筒やペットボトルを挨拶する選手にぶん投げるやつがサポーターとは呼べないのは当然のこととしても、なんか、「粋」な感じが失われつつある局面が見え隠れする気がする。これは自己反省もこめてだけど。

だけど今日の入場時のビッグフラッグ、素敵だったな。どう考えてもアウェイのスタジアムでのパフォーマンスではなかった。うん、やっぱり、勝ちたかった。失って、手に入れたい大事なものに気づく。まぁそういうもんだよね、人生って。