Sidewalk like talking about......

『I LOVE YOU』読了。祥伝社によるオムニバス短編小説群。本多孝好、市川拓司、伊坂幸太郎石田衣良など。今だけは哀しい歌聴きたくないよ。

はっきり言うと、本多孝好の文章の様式美が際立っていて、その他短編恋愛小説が立て続く状況には食傷してしまった。恋愛の終わる様を静かにしかし暖かく描いた本多の筆致はこれぞ職人業、というべき見事なものだった。石田衣良は文体は良いのだけど、ストーリーが予定調和で食傷。一番ヒット作家なんであろう市川拓司に至っては最後まで何を書きたかったのかが伝わってこない*1。(まぁオムニバス用の恋愛小説なんてそんなもんだろうけど。)試食してみて発見かな、と思ったのは初見だった中村航くらいかな。後は……プロットは少女マンガだね。後はいささか作りこみ過ぎたり、ラフ過ぎたり。まぁオムニバス用の書下ろし恋愛小説なんてそんなもんなんだろうけど。

にしても本多孝好は良かった。これははっきり言ってかなり偏った目で評価しているので、読んでみて「どこが?」「春樹のコピー?」と思ったひとがいたらごめんなさい。見逃して下さい。読点の打ち方ひとつみても好きなんだもの、これは仕方ない。けどラストに至るプロセスがしっかりしてて、最後書きたい(のだろうと思われる)シーンをしっかり丁寧に描けるという点では、この本の中でかなり飛びぬけていたと思う。そして、彼の小説が『I LOVE YOU』のラストに来る、というこの必然性よ。最後にこれがあったから、全てが許せた。そんな1本。*2


*1:僕は初期の彼の本が割に好きなので、ファンの方ごめんなさいとは言いたくない。

*2:と思ったら、単にアイウエオ順に作家並べただけなのね。あぶない構成するなぁ。どこかで順番狂ったら……ねぇ。