雨に駆ける。

『タッチ』-あだち充原作、犬童一心監督。

犬童監督作品も好き、あだち充も好き、けどこの点とその点を結ぶてのはどうでるのよ、となかば恐々と観にいってみたのだけど、案外安心して観れた。特に前半。和也がしんでからちょい後くらいまでは。

犬童一流のシーンメイキングのチカラもあってか、原作が避けてきた部分にあえて触れつつ淡々と物語を紡いでいるサマが心地よかった。少年漫画で描かれたシを、いかに実写で描くか、というのも、それなりによくできてたと思う。いや、正確に言うと、「シんだ後」の描き方、というべきか。それは原作にはないあるひとつの台詞に集約されているのだけども、一応ネタバレになるので伏せとこう。まぁ実写には実写なりの描き方がある、てことで、その辺りをきちんと載せていた点は評価していいんじゃないかと思う。

ただ後半の展開は大いに不満。試合のシーンを割いてでも、前半に描いた「伏線」をちゃんとキレイに処理して欲しかった。結局、中途半端なスポ根で終わってしまう。この辺りはやはり「原作モノ」+「企画モノ」の制約の強さを感じたというか、もうちょっとシナリオなんとかならなかったのか、と言いたくなる。原作を乗り越えようとしていたのだから、そこは原作にある台詞で片付けず、しっかり纏めて欲しかった。

犬童脚本でないのが個人的には痛かったかな。何せ、『金髪の草原』で大島弓子、『ジョゼ』で田辺某をあれだけ上手に料理した彼のことだ。もっと別の切り出し方をしてくれたに違いない。原作の主題を継承しつつ違う側面を見せる方法を彼は知っている。前半は機能したし、後半は展開を急ぐ余り機能しなかった。それだけのことかも。

 あと、蛇足かもだけど「神宮球場」といいつつ、どうみても球場が見覚えのあるさいたま県営大宮球場だったのが痛かった。これは致し方ないことではあるけど、だったらいっそ中途半端に「西東京」代表に変えず、埼玉代表にしちゃっても良かったんじゃないのかな。こゆ細かいとこのリアリティて、案外効くのよ。大変なことだってのは分かるんだけども。うーむ……。ともあれ、長澤まさみはとっても良かったです。うん。