君といた夏へ。

近づいたので再告知。お暇でしたら是非。

某合唱団 第12回定期演奏会「いろはのを」

2005年7月18日(海の日)16時開演

会場:川口リリア音楽ホール(http://www.lilia.or.jp/

「Fest-und Gedenkspruche op.109」 作曲J.ブラームス

「カウボーイ・ポップ」作詩寺山修司 作曲信長貴富

追分節考」作曲柴田南雄

「地平線のかなたへ」作詩谷川俊太郎 作曲木下牧子

チケット定価1500円(応相談)

指揮者 野本立人 清水昭

やー合唱好きからみたらこんなバラエティに富んだ構成ないんだろうな。て感じのプログラムになってます。簡単にききどころを概説。

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『Fest-und Gedenkspruche op.109』。ブラームスはあのブラームス。このひと、短調なくらめのじっとりめの(けど割と日本人が何故か好むちょっと浪花節的な)曲書くの好きなんですが、この曲は「祝言と格言」という題名が示す通り、明るめの賛歌になっております。テンポ感あるしだけど和音は重厚なので、軽すぎず重すぎず、て感じの仕上がりになっております。かの巨匠ブラームスすらイントロにしてしまう、当合唱団の物怖じしない性格が伺えますないやはや。アカペラで繰り出される絡みあう和音の官能に酔いしれてくださいませ。

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『カウボーイポップ』は、かの寺山修司のアオハル詩からどろどろした情念詩までをジャジーな進行で描いた、まさしく「ポップ」なアカペラの一幕。権威的おクラシックな和音とはまた違った和音感覚。荒野の風を彷彿させる流離いの音響を皮切りに、リズムが終始重視され、音響が奔放に駆け回りまする。リズムパートベースの魅力もたっぷり。たぶん。

ラストを締めるのは僕が出逢った合唱曲の中で1、2を争う名曲「ヒスイ」。流れるようなけれどカッコとしたハチロクのリズムに寺山のアオハル詩がしっかり乗っかってじれたくも王道なM7thを基調にした和音進行で突き進む、寺山修司の蒼い部分好きなら必涙モノであります。しかもただ蒼いだけじゃないのが、なんとも。この辺りのさわやかさとじれたさといなたさの同居具合を書かせると、ほんと信長貴富は巧いなぁと思いまする。このさわやかさとじれたさといなたさとを歌いきりたい。

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さて曲は一転現代曲へ。『追分節考』は、作曲家や音楽学者、評論家としても知られる柴田南雄によるモノであります。学者先生が作った現代曲とあってコンセプトは実に理屈ぽい。時は明治に戻って、美術やら音楽やらで、日本古来からあるモノが否定された時期があったのをご存知でしょうか?有名どころでは、岡倉天心なんかが海外に二束三文で売られたり壊されたりしてた美しい仏像を守るために東奔西走したとかだけど結局美学校追われたとかなんとか、て明治はそいう時代だったんだけど、それは東洋美術に限らず、音楽に関しても同様なのでした。つまり、西洋音楽が輸入されて、それまで口承で伝わってた民謡やらなにやらなんて音楽じゃねーよ、て価値観が生まれた訳ですな。まぁ、J-POPなんてニセモノで洋楽がオリジナルだ、ていう誰かが言いそうな価値観とちょっと似てます。明治から大して変わらないのねーこの国のひとは。けど、明治の時代が今と違ったのは、お国の文部省の役人とか国立の音楽学校の校長とかそういう文化サイドのひとが「日本古来の唄なんざ音楽じゃない」と言い切っちゃって大真面目なカオして論文とか書いてたんですよ。その点はコンテンツビジネスで「知財立国政策」なんてスタンスをとる今と真逆ですね。時代によって都合の良いように文化への解釈ころころ変える、お国なんてそんなもんでがす。おっと脱線。

ともあれ、この『追分節考』はそんな「民謡なんざ音楽じゃないざんす」という西洋かぶれの価値観に対し、そうじゃないだろう?てアンチテーゼをなげかけるのが主題の曲になってます。嗚呼、現代音楽家の考えそうなことだ。仕組みとしては、録音音源から採譜した幾つかの民謡の旋律と、尺八で以って、「俗楽旋律考」なる国立の音楽学校の校長が明治の頃書いた論文を茶化し、ダシにして、ひとつの音響空間をつくりあげましょうという譜面になってます。いや、実は、作曲者の意図を1から10まで表現したモノとされる「譜面」という概念的なモノへのアンチテーゼをも包含してるのだけども、まぁそれは実際耳で聴いて確かめてください。毎回、演奏違うんです。音楽は指揮者の指示によりインタラクティブに変化してきます。ちょっと現代アートチック。もう少し泥臭いけど。

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締めは谷川俊太郎詩、木下牧子作曲の『地平線のかなたへ』。今までうねうねと色んな作風の譜面を渡り歩いてきましたが、王道の合唱曲へとここで還ります。四季折々の風景を映し出す情感ある詩と、飽くまで美しいメロディとハーモニーが特徴。リズミカルにピアノと絡み火星人の存在を問う曲あり、W杯決定記念にサッカーの曲あり、この支配からの卒業を歌う曲あり、と盛りだくさん。ラストは「ネロ」という1匹の仔犬について描かれた曲で幕を閉じます。夏に歌うと、ちょっとじわり。くどいようですが、Spiral Lifeの『NERO』の由来になった車谷浩司の飼ってる犬の名前ネロはこの詩由来。寺山修司も好きだってんだから、このシニカルきどったアオハルヤロウがぁ、と赤面しながらこずきたくなりますな。


と言う訳で、予め話とおして頂ければチケット受付渡しで置いておきますので、興味ある方は上のメールてとこクリックするなりMixiあたりでasと名乗る人物にメッセージとばすなりしてご一報下さいませ。余りありますので無料でお世話します。宜しくです。

注。合唱団名伏せてるのは別にやましい訳ではなく、なんとなく、です。あしからず。