2人目のFinalizer.

MCもひと段落したとこで、ドラム向山テツがヘッドフォンをつける。イシダもつける。これはつまり、寺田オトが入る徴。てことで、打ち込み系のオトが来るのかなぁ、とうきうきしながら思ったらやはりきた。印象的なシンセアルペジオ山下達郎ではないほうのRide on Time』。川べりの中古車屋でみつけたおんぼろのBMWでドライヴしようぜという意味の英詩な車ソングなわけだけど、これ、今までのライヴとは全然味わえない質感だった。なんたってドラムが違うんであるドラム。とてつもない轟音のロケンローが炸裂する。A→B→A→Bてシンプルなメロディ構成だからこそリズム隊やりたい放題。特にベースやコーラスで湯川トーベン冴え捲り。こんなロックナンバーに変貌するとは想像だにしなかった。シンプルな曲ほど、ライヴで化けたりする。

ここで興奮したとこで、まだテツ氏のヘッドフォンは外れない。また寺田きっかけ曲か、と思ったらイシダがギターを下ろす。流れてきたイントロは『ネオングロウ』。後期の曲はイマイチとけなされることが多いが、『Electrocks』はともかく吉澤曲のクオリティが高く、吉澤瑛師プロデュースの石田ヴォーカル曲としては「ネオングロウ」は最高峰だと思ってる。吉澤の巧みなオーケストレーションにイシダの容赦ない詩情が乗っかる。イシダ存分に気持ちよさげに歌う。この曲のナルに見える歌い方がとても大好きだった。ギターなしのシンプルな編成に乗っかるイシダ声が哀愁を誘う。必ず君はここへと帰ってくる。てか。装置として機能するのが、寺田卓から流されてるであろう弦、管、シンプルなループ。生オトと絶妙に融合してとけてく。最期の消え入るような吉澤のピアノソロで締め。その後イシダがギターを持ち、やはり何度も聴いたイントロの進行へ。『SUPER SONIC LEVEL』。4人のグルーヴがしっかりとこの曲の讃える詩情を支える。

その後、イシダがききおぼえない進行をじゃーんと奏でリズム隊が呼応する。何の曲だろう?と最初思ったら、吉澤が歌いだした。『MONDAY'S BEEN KILLED BY YESTERDAY』。久々に聴いたけど、これ滅茶苦茶ライヴ映えするんだな。拍子も変わり、BPMも変わり捲るこの曲。吉澤キーボード対3人のバンドマンの一騎打ち状態。グルーヴは幾度となく形を変え終着点へ。この4人のバンドの地力を思い知らされた。

散々暴れたのでMCで一休み。MCまで異様に沈黙が長かったのがここだっけ?黙々とチューニングした後で、最後のライヴだからメールたくさんくんだけどさーほっとんどが開演何時か聞いてくるんだよねーイベンターの言う通りに動いてるだけだから自分の開演時間なんて知らないっての。とかいうコネタを披露。その後、キーボードのアルペジオが。『Miss』。さよならは未だ早過ぎる、なんて言葉をさらっと歌う。怨念篭った曲なはずなのだけど、この日はBPMを何時もより上げ、よりサクっと歌ってた気がする。あんまりしんみりさせたくなかったのかもしれない。こんなにカラっとした、かつバンドのグルーヴがしっかりした『Miss』を聴いたのは初だった。そして重要なことには、あの轟音の中、裏声にも関わらずちゃんとオトを見失ってなかった。この曲にしてはキレイ過ぎるくらいにラストまで。Just Together……。そしたらまたテツ氏がヘッドフォン。イシダギター外し。ここで太陽道路はないからこいつか、と思ったらそいつだった『Rock'n Roll Missing』。何度もライヴで聴いて正直、やり始めた初期に比べては良くはなってたものの、今までピンときたことはなかったのだけど、この日はとにかくやはりリズム隊と寺田ダブとの絡みが素晴らしすぎるたらなかったですよ。この辺りからPA席の寺田氏のオトが表に出始める。電子音とアンプ音の絶妙な融合。かちかちしたビートの曲なんだけど全然型にはまってなかった。ぐねぐねするベースを感じながら気持ちよくアウトロ。したらそのまま何を言ってるのかよく分からない英語がさらさらーと流れ出し4つ打ちが始まる。イシダがイントロの間に(確か)青いギターを肩にかけた。アルバムでは地味だがライヴだと異様にはまる曲というのが幾つもあるがそのひとつ。この曲は絶対でてくると思ってたし、想像以上に素晴らしいエレクトロパンクサウンドが炸裂した。『PHOTOSYNTHESIS』。イシダギター弾き倒し。会場ヴォルテージ急上昇。吉やんは間奏で赤いレーザーブレードを振り回す始末。嗚呼、このホンモノなニセモノ感溢れるオトこそ、SCUDELIAサウンドなのである。これを最期のライヴにやらないテはない。確実にステージ+PA席でひとつの世界観を築いてしまったのである。

この世界観が結実したのが今日2度目のクライマックス。全てはあのイントロSEから始まる。Aメジャーのパッド音とノコギリ音。この曲は聴かずには終われなかった『200 miles away〜霧の200マイル』。時折目を閉じながら聴いていた。さまざまな音が会場中を貫き溶けてく様が余りに素晴らしかったからだ。そういう音楽に視覚は本来不要なのである。CDではイシダひとりの仕事で作られたこの曲が、ステージとPA席により別の有機的な形を与えられる。深く哀しく儚く、だけども力強いこの日のこの音を僕はきっと忘れることはないだろう。最期のアウトロでイシダは青いギターを外す。ここでこのライヴ終わっても良いな、とすら思えた瞬間だった。candy apple red……。

けど未だ終わりじゃない。こんな完璧すぎるキレイ過ぎる終わりを彼らが用意しないことは分かっていたことだ。忘れてはいけない。今日は祭りなのだ。とびきりのリズム隊と、ハイテンションな(ほぼ)満員の観衆を前にしたマツリなのだ。後半戦です、みたいなことをイシダは大体ライヴの終盤に言うので全然後半ではないのだけど、まぁ確かまた言った気がする。後半戦盛り上がってきましょう。何時くらいだろう、とちらり思ったけど、時間のことなんてとっくに忘れていた。