1人目のFinalizer*1.

SCUDELIA ELECTRO解散ライヴ「Finalizer」@渋谷AX。

会場に着いたのは6時半くらい。丁度、自分の待ち番号くらいが呼ばれていたのでまぁいいかとのんびりロッカーに向かって荷物を放り込んでから悠々と会場内へと向かう。真ん中10列目くらいに陣取っただろうか。ステージセットは中央後方にドラム。右に久々にみるキーボード群。真ん中にマイクとギター。右にマイク。あれ?HDDJ卓がない。寺田康彦氏はステージ乗らないとこの時点で悟り、ちょっとだけがっかり。ステージ上の寺田氏の忙しない様を見てるの大好きだったのにな。吉澤瑛師の指を暫く眺めているのも捨てがたいのだけど。たぶん、乗らなかった理由は、ドラムの音がでかいからだと思う。絶対。

ビートルズの曲がBGMとして延々流れてる。ライヴ盤音源ぽい。カヴァーだったのかな?誰のカヴァーか知らないが『STAND BY ME』も流れてた。傍に居てよ、と来たものだ。嗚呼、そんなこといわないでも今夜はじっくり傍に居て一部始終を眺めてやるよ、と心の中で軽口を叩く。Tシャツは、ベスト盤レコ発のとき、初めてSCUDELIAのライヴに行ったときになけなしの小遣いで買った黒シャツだった。左胸に「SE」のエンブレム。SEは、SCUDELIA ELECTRO

段々と待つのに飽きて、やることもないのでBGMに乗り始めた頃に客電がふと落ちた。余り楽器の調整がなく唐突だったのでちょっとびっくりした。テレビ生放送対策かもしれない。突然群集が前に詰まる。4人の男がステージに上がる。やはり寺田氏はいない。まぁ機材を何処かでいじってるんだろうなぁ。残念(機材をいじってるひとフェティ)。

石田小吉がなにやら挨拶し、おもむろにアコギを取り出した。お、ひょっとして12弦?と思ったらやはりそうだった。『MOONBASE』のインストで最期のステージは幕開けた。確かそう遠くない何時ぞやの渋谷のライヴで1曲目同じ曲を演奏ったのだけど、その時の昂揚感を思い出した。イシダもあのとき「こんなに盛り上がるとは思わなかったなぁ」と言ってたが、実際弾き語りのクセに心の中大盛り上がりなのだ。そうゆう力があの短いインストにはある。一頻り気持ちよく弾き終ってカデンツ!眺めてたバンドメンバーがそれに反応して短い間を挟んで2曲目の準備に入る。ハローハロー……初花凛々ではなく『楽園』だった。吉澤のピアノアルペジオを挟み、ついにリズム隊が鳴る。向山テツがスティックを上げ……

重っ!

て一言のドラムがAXに響き渡った。一気にはじめてSCUDELIAライヴ行って暫く通いつめた頃のあのオトを思い出した。そう、確かにこういうオトだった。これに慣れるとそら堀ノブヨシのドラムは軽く聞こえちゃうのだ。続くベースも相変わらず極太の湯川トーベンベース。ドラムが回る回るベースが伸びる伸びる。そこにギターとピアノ、シンセ弦の音色が入り気分は一気にハイファイトリップ。『楽園』がこんな良い曲だと思ったことなかった。そういや、石田のヴォーカルが何気に轟音バンドサウンドに負けてない。向山テツ・湯川トーベン時代のイシダヴォーカルはマイク音量の上げすぎか篭るわ、オトが拾えないせいか転調でほぼ音外すわでけっこぼろぼろだったのだけど、数年の鍛錬のせいか、確実に歌唱力は増してる。そうか、歌ってるから良い曲に聴こえるのだ。感慨。追憶。楽園が見えてきた。いや、観るには未だ早過ぎる。未だ2曲目だし、ほんのジャブなはずである。この後ストレートが……と身構える間もなく、聴き覚えあるAメジャーのギターの咆哮と、ピアノの印象的なリフ。この曲を忘れる訳がない。『My Pray』。とにかくヤバイ。この曲ほど重量リズム隊の威力と、イシダ歌唱と詩情とメロディの妙と、吉澤瑛師の超絶ピアノ+シンセ使いが味わえる曲はない。ドラムはここぞとばかりに4つ打ちの隙間に空気つんざくスネアを放つ。分厚さと流麗さのカオス。嗚呼もうダメ。この曲をこの瞬間に聴けただけで、今日ここに来た目的が果たせたってもんだ。I wanna be your baby, I wanna be your love......

曲が終わった瞬間、朦朧としたくなったけど、ここで何か追い討ちをかけるように高BPMでギターが鳴りドラムが回りベースがうねうね鳴り出す。あーチキショウ『Live+Drive』かよ。少し休ませておくれよ。と思いつつモッシュに身を委ねる。最早忘我の域。MOONBASEと楽園のまったりスタートに油断してたらこれか……ともかく会場のエンジンはこれでばっちりかかったようである。

ここでMC。殆ど内容なんて覚えてないので、挨拶した他は大したこと言ってなかったと思う。あ、大阪の話にちょっと触れたか。オブラートに包むとステージと観客が近かったとかそんな話。笑い半分にヒッシにここまでの異常な興奮を取り戻し、水分をとる。『traek』『FRAMINGO』辺りの選曲多いんだろうなぁ、と思ってたらやはりそうだった。束の間の休息の後きたのは『FADE』。あぁ、この曲は特別深い思い入れはないので緩やかな8ビートに任せてのんびり聴ける。歌詞を間違えたオチに、イシダお得意の「歌詞に意味などないーhu hu hu yeah!」で締める。この曲はそうかもしんないがさ、照れ隠してもんだろうそれは、このロマン主義者がぁ。と心の中で苦笑しつつ突っ込む。この曲はイシダの仕草振り付けが楽しいのでのんびり観察して癒された。その後、どんどここどんどここというシャッフルなドラミングが。正直この曲が来るとは思わなかった。『Baby Baker Bitter Sweet』。パン屋の娘ストーキングソング。君のピーチを見つめてたいのさ、というフレーズはやはり鮮烈かつ意味深さすら感じられる。拍手があるせいか、後期の曲の割に、案外盛り上がるのね。

ここでメンバー紹介が入ったぽい。超重量級リズム隊の紹介。ちょっと前に「ベテランリズム隊によるロックンロール教室の生徒状態だった。」とテツ氏+トーベン氏のリズム隊とのライブについて雑誌の記事で回想してたけど、今日のライヴではイシダも吉やんも負けてないのが素敵過ぎる。そのオトの豪胆さと繊細さのバランスを奇跡的に作り上げてたのが、実は丸見えのPA卓にいるのを紹介された寺田氏だったんだろう。ステージに立たずとも、良い仕事なさる。けど最期くらいは、ステージで見たかった……。しかし、寺田氏の仕事の本領はこの後発揮されることになろうとは汗だくの僕には考え付く余地もなく。つか、あちー。何か親方親方言ってるよ。最期なのに何をおちゃらけているんだこやつらは。