ブームの安息は何時?

さて、『FACELESS MAN Vol.1』-THE BOOMをビデオで流しながら。最近、妙に宮沢和史の顔と佐野元春の顔が被って見える。ミヤの顔が落ち着いてきたせいかもしれないけど。「カオナシ」なんてタイトルをつけていた彼が最もルーツ探し的なモノを求めてた時期ではなかろうか。今や日本が世界に誇る「世界のミヤ」となり、ロシアのシンガーとコラボったり、小泉今日子とテレビで対談したりしてる。話きいてるととってもオトナだ。すげーオトナだ。しかし、このライヴヴィデオが2巻セットで300円とは、とんでもない時代ですなブクオフ。いかにも迷走している過剰なセットもさることながら、今やときめく名プロデューサー朝本浩文のキーボードがすげぇ。そして、格段にミヤの歌が巧くなった時期でもあると思われる。現在の宮沢和史発声がすっかり確立されてる。

ところで、THE BOOMといや、最近の再評価熱の高まりか、こんなのがでてきてる。

コレ。http://www.five-d.co.jp/boom/discs/album/peace/index.html

と、コレ。http://www.bmgjapan.com/_artist/item.php?id=1690&item=6143

キレイなまでにシンメトリー。前者はバンドブームの最中、THE BOOMが発表したデビューアルバム『A Peacetime BOOM』。後者がex.KICK THE CAN CREWMCUによるニューアルバム『 A Peacetime MCU』宮沢和史をフィーチャーしてることからも分かるけど、ジャケットからタイトルまでこの徹底ぶり。80年代後半から00年代のJ-POPを総括するかのようなフィーチャー・チューンの数々の中でも、MCUTHE BOOMという存在を強く意識していることが伺える。

KICK THE CAN CREWとJ-POP再評価の蜜月な関係については『クリスマス・イブRap』を例に挙げると実に分かりやすいけど*1MCUによるこの盤のビジュアルアートワークを含む作り方は、ある種J-POPへの返歌的なモノと捉えられるかもしれない。とゆうか、J-POPという括りがすっかり「出来上がり」「定着した」様を証明してくれるタイプの盤な気がする。増田聡氏風に言うなら「自給自足化」つまり「国産ポップスによる参照元の内製化」の究極の形かもしれない。

けど、90年代後半で「参照元の内製化」というと、J-POPにおいては、くるりやらキンモクセイやらキリンジやらが過去の歌謡曲なりニューミュージックなりナイアガラなりはっぴいえんどなり、つまり70年代とかのやや古い音楽を元ネタとして参照することが「国産ミュージックの歴史」てのをリスペクトし再解釈する行為と捉えられていたように思えてたんだけど、この盤が再解釈する「ポップ音楽史」、あえて言い換えると「歴史」てのはもっと新しい。というか、自分が成長と共に同時代的に聴いた音楽を素直にリスペクトするて行為を見るに、すっかりかつてあった「J-POPの歴史」ていう文脈が「J-POPと自分史」という文脈に変換されてるのが分かる。これはとても新しい、と言うか、現在的な現象という気がする。歴史の自分史化。自分語りの時代に相応しいというか。何と言うか。歴史が自分の身の回りのことのみに拠り歴史と解釈されるというか。今流行のオレンジレンジトンガリキッズこの市場に新規参入してきたHIGHWAY61*2も、基本的にはそゆ路線と同じとこに乗っかってると思うのよね。この「歴史的解釈の自分周辺化」(なんだそら)が人に拠っては「浅い」と見えるであろう訳だけど、そこはそれで捉え方の違い、という気はする。

話が逸れた。とは言いつつ、『A Peacetime BOOM』て89年リリースなんだなぁ。或いは、すっかり消費のスピードが速まった現在においては、16年という時間は「歴史」として総括するに十分な時間になってしまった、てことでもあるのかもしれないねぇ。とか思いつつ、相変わらずビデオをちらり聴き観る。丁度『島唄』を唄ってる辺りだ。確かにこの曲がW杯をきっかけとして10年の時間を経て息を吹き返し、更には国境を越えてってサクセスを描いてった様を見ると、確かにこれを「J-POP史上」ということばで括りたくもなるかもしれない。けど、それは結局「J-POP市場」ということばと対になっていたりもするのよね。かつて行ったブラジルツアーやブラジルリリースは恐らく悉く商業的には失敗したであろうにも関わらず、結果的にはそれがその隣の国のアルゼンチンて場で、しかもサッカー場で開花するという不思議現象がなければここまでの「国際市場的な」成功はなかった訳で。まぁ、途中から何を書きたいのか分からなくなった辺りでビデオの前半(Vol.1)が終わったので、筆を折ろう。ぽきぽきん。


*1:http://mmcs.edhs.ynu.ac.jp/~askaw/sotsuron/6_shou_2.html 或いはhttp://mmcs.edhs.ynu.ac.jp/~askaw/work/report/x_e_rap.html。常に手前味噌、が『asap.』の合言葉。

*2:この市場はとてもセンスが要求されるのでそこは注意して参入して頂きたいものです。勿論、一般論です。