敷居値の住人(2)。

http://d.hatena.ne.jp/assa/20050329#p1JASPM日本ポピュラー音楽学会例会(http://homepage3.nifty.com/MASUDA/JASPM/meets.html)にいってきました。の続き。(発表の順番が変更になっておりました。)


3:「ライブハウスの社会史―1960年代以降のポピュラー音楽をとおして」修士論文)。

http://www2.hawaii.edu/~kyohei/mathesis.html

米国と日本のライブハウス事情を調査・比較し、検証してみました、的なお話でした。アマチュアミュージシャンとプロの区分等、まぁいろいろなお話が聴けました、と。ご本人が音楽活動をやられていて、なおかつアメリカ人のミュージシャンの方とも親交があります、てので、その興味から拡大していって調べた感じでしょうか。米国のライブハウス(クラブというらしい。)の事情が聴けたのは興味深かったです。

これも「社会史」とか「プロ/ノンプロ、インディーズに対する概念」「ポピュラー音楽する<場>について」とかさまざまな議論がなされておりましたが、そんな話をぼんやり聞きつつ誰も突っ込まないのかなぁ、と思ったのが「なんでヨーロッパの話が出てこないんだろう。」というピュアな疑問。この後、研究をアジアに拡大したい、と発表者の方おっしゃってましたけど、確かにアジアだって特色あると思うのだけど、米国と欧州でだって恐らく違うはずで、それも例えばきっと英国とフランスとかドイツとかの間でもきっと何か違うはずで、その辺り僕は木になって仕方ないのに、ヨーロッパの欧の字もことばも出てこなかったのがちょっと切なかった。欧州の音楽はお好きでないのでしょうか。あるいは書いてはあるけど、触れなかったのでしょうか。網羅的にやられたいのであれば、その辺りは避けられないと思うのですが。

なんというか、好きなモノについて突っ込んで研究することの難しさを感じたです。興味あると、いろいろ書きたくなって概論的なものになってしまう、て難しさ。どうせなら、手広く広げるよりご興味の元にあった米国のライブハウス事情に特化して「米国しかやりません!」て断言してしまい絞った方が宜しいような気がしました。


4:「音楽雑誌におけるロック批評の構造――雑誌『ロッキング・オン』における渋谷陽一の美学」(学士論文)。

id:shinimaiさんによる発表。http://d.hatena.ne.jp/shinimai/20050112#p1ならびにhttp://d.hatena.ne.jp/shinimai/20050327#p2、等々。

日々妄想批評書きスレスレ、つかおもっきしそれに足突っ込んでる文章を書き連ねている自分的に非常に興味深く面白い発表でした。こゆしっかり調べられた論文の発表聞くとうれしくなっちゃいますね。いろいろ書きたいのだけど、嗚呼、実家帰ってるから手元にレジュメがない……。

「序論についてはやはり書き直したほうがいいかも」とおっしゃっておりますが、個人的には、発表聞く限り、序論に関する部分は氏の論文に対する動機の強さが伝わってきて面白かったので、別段書き直す必要はないんでないかなぁ、と思いました。いや、ガクモン的なケンキューセーカとしての体裁を考えると、確かに立派なお題目と問題意識とやらを頭につけるにこしたことはないと思うのだけども、渋谷陽一のいらだちを語るその動機が筆者の渋谷に対するいらだち、ていう図式がとても面白いし、削ってしまうとなんとなく勿体無い気がする。なんとなく。前も書いたけど、大学の文科系卒業論文は、荒削りでも動機の強さを感じさせるモノの方が良いと個人的には思うです。や。たぶん、序論変えてもその辺りはびんびん伝わってきそうな気がしたですが。なんとなく。

因みに氏の発表を聞いてると、うっかり渋谷の考え方に同調的になってしまうのは、妄想癖を持つ人間ゆえの性か。そう考えると、僕も僕で客観批評にいらだち覚えてるひとりで、僕の感覚的な文章にいらだち覚えてるひとはたくさんいるのかもなぁ、とかとかぼんやり考える。ほらあれ、固体発生は系統発生を繰り返す。てやつ?(いや全然違う。)

この研究の続きの展開が気になりますが、それはひょっとして題材の選び方次第では、ポピュラー音楽研究の外を出ていくような気もしなくもないなぁ、とかとか思ってもみました。けどそれを言うと、僕の卒論も別段題材の選び方次第ではポピュラー音楽の外でも出来たんよな。そうか、だからきちっとしたお題目や問題意識とやらが序論に必要なのか、なるほど!(いまさら気づく。僕の論文てその辺どうなってたっけ?ベ師に1回ボツにされてほぼ全文書き直した記憶はあるけど。)


id:shinimai氏の発表を聴き終えたとこで次の用事あったので時間切れ中座。たぶん、参加者名簿と所属を見て、「何モンなんだろうこのひと……」と首をかしげたんだろうな運営していた方々は。ともあれ発表者の皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。非常に刺激を受けましたです。頭足りない分、たまには刺激受けてないとね。