気分韜晦。

『色色衣』-スピッツと『DO THE BEST』-森高千里の2枚をハードオフで購入。

……先ず、後者を今更買った言い訳をすると、ひとつはあややのカヴァーのせいです。こないだ店で「渡良瀬橋」流れてるの聴いて無性に歌いたくなったのです。けどあややを買ったり借りたり出来る程素直な人間でない僕は、森高千里のベストを買うという行為に走ったのでした。やぁ、L⇔Rにゲスト参加してたし、ドラム叩きとは知ってたけど、全曲叩いてるとは知らなかった。流石に「巧い!」とは思えないけど、非常に素直なドラムプレイで好感は持てる。やっぱDIY精神は重要よね。そして、特にバラード系の曲をつまみ聴くと、ガールポップの基本をしっかり抑えててこれもまた好感持てる。その後、細野晴臣とかと色々やってたけど、その頃の曲より森高の声質には合ってるんじゃないかな。斉藤英夫というひとが曲をつくってることが多い。ハロプロ関連の仕事をしてる高橋諭一も参加してる。

が、この中で異色の曲が実はある。それが高橋の編曲、森高の作詞で作られた某ビールのCMソング。『気分爽快』。この曲が黒沢健一の作曲というのは割とファンの間では知られた話だけども、こうやって並べてみると、面白すぎる。異色だ。明らかにビートルズ辺りの洋楽を意識したメロディライン、黒沢コード進行、イントロ/間奏/アウトロのペケペケ(?)ギター、コーラスライン。それにいかにも90'sガールポップな雰囲気なシンセブラスやらなにやらが入ってなんだか曲の中で複数の音要素が不思議に共存してる。これで歌詞が「飲ーもーうー♪」ときたものだ。そのギャップになんだかめまいがしてきそう。や、良い意味でだよ。良い仕事してるんですよ、この曲で森高やスタッフは。実際、これ日本語の歌詞を載せるだけでも大変なメロディラインだと思うし(あー黒沢健一のこの曲のデモテープとかもしあるなら聴いてみたい……。きっとすごい渋い感じで作ったに違いない。間奏とか殆どそのまま使ってるんじゃないか、と妄想してしまうことしばし。)それに「トモダチと同じひとに憧れてそのトモダチがそのおとことデートすることになって私の分まで頑張ってねとビールでカンパイする。」という歌詞をメーカーの要望に応えて(?)しっかり書いて歌い上げた森高は大したものだと思う。弱冠日本語のアクセントとのズレはあるのはこれはしゃーない。明らかに作曲者が日本語を意識してないからだ。

実は黒沢の曲て日本語歌詞を載せるの難しい。L⇔Rでも歌詞はどちらかというと記号的というか、ことばの音の質感を重視してもことばの世界観までは踏み込んでいない感じがあった。日本語を載せることを諦めた曲なのか、ブライアン・ペックに作詞委託して英詞曲にしてしまうこともしばしば。その英詞の方がL⇔Rの曲の質感を巧く捉えてると思えることもしばしばあった。黒沢健一は英語歌うの巧いしね。

他の作家の例を見ると、加藤いづみの『Spring a-ring-ring』に提供された「7th ヘブン」という曲がある。アレンジはなんと上田ケンジだ。バックではカーネーションが演奏してる。Coccoのサポートもしてた堀越信泰も参加してる。ただ、この歌詞(岩里祐穂作詞)がまぁなんというかなんというか……。(とりあえず、7thが多いからて理由でセブンスヘブンは無いだろう?)ただ、この曲に関してはアレンジも実はそんな良くない。これは黒沢健一の持つ素直なポップさと上田ケンジアレンジやカーネーションを中心とした演奏陣の持つ独特のひねた質感と加藤いずみの素直でひねたヴォーカルが巧いことはまってないのが原因だと思うのだけども。それに比べると、『気分爽快』のアレンジは黒沢楽曲の洋楽的素直さに高橋アレンジのガールポップ的素直さが異色ながら絶妙にブレンドされてて結構面白い。ただ、これもぴったりパズルのピースがはまってる、とは言い難く、違和感が弱冠残る。

で、何が言いたいかてと、黒沢の楽曲を日本人の音楽屋や作詞家が料理するのて難しい、てこと。だからL⇔R活動休止してソロになってもアレンジ陣は殆ど変えず岡井大二、遠山裕のふたりを中心に一緒にやってたんだと思う。で、バンドサウンドでやってみたもののやっぱり煮えきらず、今度はSCIENCE MINISTRYホッピー神山に料理させたら、新機軸は打ち出せたものの、黒沢の素直さの良い部分は十分引き出されない結果となったり。実際、良いメロディを書いてるのに不思議なことだと思うのだけども。誰か彼の提供曲に良いリリックを載せて、良いアレンジを施してくれよー、と思う訳ですよ。「思ってた」訳ですよ。

……とまぁ、ここまで書くと懸命なる閲覧者の方は「要するに2004年、黒沢の曲にほぼパーペキに歌詞綺麗に乗せて、今までの黒沢提供楽曲にないアレンジを見事なバランス感覚と個性で料理したMOTORWORKSマンセープロデューサー石田小吉マンセー!と叫びたいんだろう?」とお思いでしょうが、そんなことはあります。その通りです。だってその通りなんだから仕方ない。まぁ考えてみれば、石田の素直に洋楽から影響を受けた音楽性と黒沢の洋楽から素直に影響を受けたメロディラインが相性よくないはずがないんだよな。うん。

そんなで、森高のベスト盤(420円)から飛びに飛んで、MOTORWORKS礼賛バナシになってしまった。やー『色色衣』についても言いたいこと色色あるのだけどもさ。つかそっち本題にするつもりだったのに。まぁいいや。て、どうせそっちでも石田はなしになるんだろうな。しかしサイゾーに出てるとは驚きだな。今度立ち読みしよう。おもろかったら買おう。