Shinagawa meets Odaiba.

『東京湾景』-吉田修一

パークライフ』を読んだ時は、この作家さんは何を書きたいんだろう、てのが理解らず、きっと書き切れないことを書きたかったんだろうな、と解釈してたのだけど、この文章を読んでますます理解らなくなった。

なんつか率直な恋愛小説。著者初、というけどその割にかなりこなれた文体で見事に所謂「恋愛小説」のフォーマットをなぞっているな、という印象。唯川恵とか江國香織辺りの女性作家の持つ空気感が漂ってるとこになかなかの巧さを感じる。けどもっと言うと巧さ以外のモノはなかなか感じられない。んー。

けどそんな小説の中に女性恋愛小説家がパラレルに登場してきて断筆してる、てのがなんだか興味深いモチーフだったり。この辺り掘り下げてみると、恋愛小説というフォーマットや作家性という神話へのアンチテーゼとして読めなくもないかもしれない。けどたぶん、そんなこと考えずに読んだ方が面白いやね。この小説は。つまりはきっとそゆ小説を書きたかったんだろう。たぶん。まぁどうやら実にとれんでぇな文章らしいのだ。