骸に咲く花。

『ぼくの地球を守って』-日渡早紀、読了。最早古典なのかな?とにかくこれはオススメ。オカルトな気配がしてイヤだ、てひとがいるかもしれないけどそれだけの理由で倦厭してる暇があったら騙されたと思って3巻くらいまで読んでみよて感じ。後は物語のちからに引き摺られるまま、最終巻まで突っ走るだけだ。

とにかく物語としてよく出来てる。ずっと「少女マンガは断片的なメディア」なんて偏見を持ってた僕が恥ずかしいくらいによくできてる。センの貼り方から世界観の構築に至るまで。そんなで激しく「物語消費」を感じた。奇しくも時代は87年から94年。昭和天皇崩御というひとつの物語の崩壊劇を挟んだ過渡的時代。田口ランディがエッセイで紹介してたと知って、妙に頷いてしまったり。

設定の端々に手塚治虫の影響を感じたのもなじみやすかった理由のひとつか。本人がそれを意識してたかは知らないけど、紫苑が作中でジャングル大帝を読んでるシーンを見るに、日渡も手塚ファンであることが予想される。そんな前提で話すと、特に火の鳥の宇宙、未来モノとはモチーフが被る部分が多い。輪廻転生だの前世の因縁というモチーフだの、女性主人公の神格化だの戦争による滅亡だの、エコロジー志向だの、エトセエトセ。端っこを見ると、超能力を使う悪童なんてのは写楽クンぽくも見える。(因みに手塚の死は89年。しっかり跨いでいる。)

そんなこんなで、実のとこ非常に古典的な傾向を持った作品ではある。それがチープな焼き直しにならなかったのは、その再構築の手法が鮮やかだったのと、何よりその台詞回しの秀逸さ、更に言うと過剰なまでのロマンチシズムのせいだろうか。とにかくこの作家、美しいある1場面を描くためにセンを積み上げていくのが巧い。その場面まで焦らして焦らして、最期美しい台詞か場面構成で読者を泣きまで至らしめる。そんなこんなで脱帽ですよもぅ。そんなでマンガ文庫片手に恍惚な1箇月だったのでありました。胸がいっぱい、おなかもいっぱい。