スピーチの原稿〜手品、合唱、ジョブスの三段噺。

1月に今の会社に転職したわたくしめでございますが、退職の挨拶スピーチのときに、どうせ最後だから記憶に残ることをやろう、と、手品をやって去りました。東急ハンズで売ってるようなやつですが、けっこ反応がいいもんでした。

手品ってのは、実んとこ予定調和的で、結果どうなるかって予想できるもんでござんす。大きなハコからハコより小さいものでてくるとか(いや、これ逆だ…)、モノが消えるとか、トランプのカード当てるとか。

にも関わらず受けるんです。なんでかって言うと、その結末にもっていくまでのプロセスの中に、意外性や演出があるからだと思います。

僕がなんで退職のときに手品やろうとしたかって言うと、趣味でやってる合唱の指揮者の方がよくやってるからです。これみて、やってみよっかなと思い立ちました。

なんで指揮者が手品なんだろう、て思いますが、実は手品と音楽ってのは、似ているところがあると思うです。

クラシックな音楽ってのはけっこう予定調和の芸術であり、知ってる曲の再演でございますから、皆、どういう曲が鳴るのかってわかりきってるわけですね。けど、その演奏中のプロセスにある指揮者や演奏者の創意工夫が、芸術性に結びつくわけでありんす。

更に言うと、これ、ビジネスにも当てはめて考えることができると思います。

ちょいと昔の例でございますが、AppleiPhoneのリリース。あれは、まさしく手品的な演出だったと思うところであります。皆、大体何が起こるかは実はわかってます。iPodがケータイとくっつくとか、UIが液晶タッチパネルになるとか、既に断片的情報はマスメディア経由でリークしておりましたし。

にも関わらず、あれだけ騒がれる。それは、発表に至る、あるいは発表のショーのプロセスが練られたものだからだと思います。スティーブ・ジョブスの役者的振る舞いがそれを可能にしております。Appleは、プロダクトやビジネスモデルの優秀さもさることながら、お客様が何を求めているのか察知し、ジョブスを役者として演出し、そしてどっかんと騒がれるように仕掛けています。

僕は今サービスビジネスの企画者なわけですが、サービスってビジネスにはこういう仕掛けがとっても重要になると思われます。お客様がどんな要素に興奮し、反応してくれるか、それを先回りし予測し、演出する必要があると思います。そんなことを考えながら、ビジネスっていうものをすすめられたらいいなぁ。と思ってみたりして。