農業芸術概論的に。

人間の生きる根幹って、農業だと思うんですよ、とその音楽家は言いました。

土と太陽から、モノを育てて、それを人に与えてお百姓は生きているわけで、それってなくては誰も生きていけないわけで、実にプリミティブだと思うんです。本来仕事って、そういうものですよね。「食うために働く」って言うのは、食べ物をつくって交換するというのが仕事の根本だからと思うんです。

楽家にしては珍しいことを言うね、と僕は言いました。僕にはそうは生きられないなぁ。すると彼はうるさすぎる街を見つめこう答えました。

音楽は、そういう根本とは違って、もっと人間的なものだと思います。それは、プリミティブとは反対に、高度なんです。野菜や米みたいに、なくても生きていけるものじゃない。けど、それをつくって与えて対価をもらうというのは、とても難しい。考えなくちゃいけないし、僕らは必要とされなくちゃいけない。根幹とは違うところで勝負しなきゃならないんです。

そこまで言ったところで、彼はこう付け加えました。WEBの仕事も一緒じゃありませんか?

僕らは高度であるべき場所に生きている。食うために。じゃぁどうやったら食えるのだろう?考え込むな、考え抜け。僕は、数年前にある大人から言われた言葉を思い出した。思うに、僕らはあまりに人間的な生き物なのだから。