雨・花・虹。

『ばらいろポップ』-Singer Songer

世の中にまたひとつ素敵なポップスが生まれました。と断ずるに恥じない名盤。

まぁなんつか、先行シングルの『初花凛々』を聴いて、題名『ばらいろポップ』ときたらひたすらキラキラ感の止まらないストレートなアルバムになるんかなぁと思ってたのだけど、そんな期待は良い方向に裏切られた。そういうストレートさのウラにある質感みたいなモノがこの盤には溢れてる。歌う歓び、なんて言うだけなら簡単だけど実際喜びを讃えながら歌うことなんてとてもむつかしい。このむつかしいことを見事に演奏きってる印象がある。何を根拠に、と問われると困るのだけど。

あえて述べるとしたら『Sing A Song〜No Music No life』を1曲目に、『初花凛々』を終曲に持ってきたのがなんとなく象徴的な出来事なような気もする。1曲目はCoccoソロ時代に英語でやってた曲のリメイクだけど、アレンジはその頃のバンドサウンドモノに比べ圧倒的にやらかい。こっこの歌声は実に官能的で鼓膜に良い感じに絡み付いてくる。一方、『初花凛々』は爽快感のカタマリみたいなポップスである。岸田繁退院後にこっこが披露した曲というから、これは岸田を癒すための曲だったのだろうか。カラッとしたインストに伸びやかなヴォーカル。どちらが官能的かと問われれば、コーラスの方がヴォーカルよりなんとなく色艶がある。勿論、こっこの声に色気がないかと言うとそうではないんだけども、「音楽なくして生命なし」と宣誓する1曲目とは何かが違う。その変化の過程が2曲目〜9曲目という印象受けた。なんとなく。

なんかこのアルバム、くるりとこっこがどうだのこうだのと騒げば騒ぐほど、コーラスワークが美しいだのヴォーカルがどうのと評論じみて語れば語るほど盤の本質から遠ざかる気がする。まぁ薔薇、て言っても、気障でもなく、気取ってない。その色はとても深いし、その花びらの上にしたたる雨粒がとても澄んでいる。例えるならそんなアルバムでしょうか。て、全然解説にもなってない。まぁ語るのも諦めたんで、残るこのひとことだけで十分ですかな。聴けば分かります。良い盤です。「ばらいろ」なんてことば、陳腐な比喩で使えなくなるよ、マジで。「僕の人生は、ばらいろに染まったーっ!」