続々、これは渋谷系ではない。

http://www.geocities.jp/radiodaze76/KKK00.htm

先に言っておきますが、渋谷系年表、これはホント良い資料と思います。ムーンライダーズSpiral LifeL⇔Rもちゃんと載ってる。それどこかMOTORWORKSまでしっかり(しかもCDリリース年でなく活動開始年で表記というマニアックさ!)表記されてることに気付いてびっくり。これ、誰かが「偽史」作る前に皆でブクマクして祭り上げて正史にしちまいましょう。

等と言う話はさて置き。id:nanashinoさんからの拙記事(id:assa:20050522#p2)への言及(id:nanashino:20050527#p1)について。

概ね、Spiral Life渋谷系の末席、若しくは入るか入らないかギリギリのボーダライン上にいて、中心には入れない理由はid:nanashinoさんの分析通りと思っております。つまり車谷浩司が「元BAKU」だっていうことへの色眼鏡+渋谷系のど真ん中にいたフリッパーズギターのアートワーク、クレジット方法等々のイメージのパクリ。そしてそれがセールス的にもそこそこ成功して露出増えて渋谷ローカルなシーンではなくメジャーシーンに片足かけてしまったことが、渋谷系ど真ん中のリスナー層には受け入れられなかったと考えられまする。おまけにケミストリーにカヴァーされる時代さ。嫉妬もされるさ。

ところで色んな資料を漁ると、Spiral Life渋谷系とどんな位置関係にいたのか推し量ることができる、てことでクリッピングしてみましょう大作戦。

先ず、『音楽誌が書かないJポップ批評29 フリッパーズギターと「渋谷系の時代」』より。

上に挙げた渋谷系年表を作成されたオクダケンゴ氏による「オリジナル&ネオ渋谷系アーティスト・ベスト52」(pp.51-57)。

選外。

……まぁめげるこたない。えてして、こゆ「ベスト」てのは本当の名曲を逃したりしがちなモノである。Spiral LifeのTreasure Collectionの選曲のようなもんである。と言う訳で、そうさそうさーと目を皿にして1箇所スパイラルについて言及された記事があったことを思い出し、ページをめくる。あった。「渋谷系名盤46選」(pp.82-87)。p.85にあった、過去の音楽性をあっさり捨て去るおとこAIRですら名盤と認める儚い過去進行形が詰まった名盤『Further Along』。ライター安部薫氏による選。さぁどうだ。

ニセモノたる渋谷系からさらにニセモノ扱いを受けていたスパイラル・ライフ

……。……。イントロからしてこれである。

そのイントロに続く記事の要旨をざっくりまとめると、「元BAKUて車谷の肩書きがそういう風潮を生み出したのかもしれないがけど、渋谷系っていうにはネタがマニアックさに欠けるし全国的なセールス高すぎ。まぁ地方人の渋谷系ガイドとしてはいいんじゃない?」的なレビュー。但し「ビートルズのサイケネタが多用されたこの1stアルバムは、虚ろな脱力感が頑張ることを嫌う渋谷系のクールネスと合致している」とある程度、渋谷系との共通項を見出してくれている。

……が、はっきり言って、こういう共通項の見出し方はスパイラルヲタ的には全く嬉しくもなんともない。表面的にはクールネスに見えるその奥に影のように映るオボロゲなイメージにある繊細さと、押さえつけたジコヒョウゲンへの熱情がSpiral Lifeの楽曲の中には通奏低音的に流れているのであって、それは「諦観」と言うよりかは「ニセモノであることを確信犯的に悟りつつ普遍的なホンモノであることを願う矛盾した欲望」に支えられているのだと思われる*1。そして、普遍性を目指したからこそある程度売れた。横アリも埋まった(そして横アリに埋まった。)。ROJにも受けた。

だから僕はSpiral Lifeを「渋谷系」と括られることに逆に疑問を持っているのですよ。立ち位置中途半端上等。入れてもらえなくてもいーじゃん、的な。現に『Speak@Easy』というロケオンジャポンから出た鹿野淳との一連のインタビューでも、元BAKUだのポストフリッパーズだのという偏見をあからさまに嫌っている。純粋に「歌モノのポップスをやりたい」ということで結成されたバンドなんだから、そう思うのは当然と言えば当然だろう。

かと言って、渋谷系近辺のカルチャーと全く繋がりがなかったかと言うと決してそういうわけでもなく、まぁ渋谷系の潮流を受けて新たな手法でジコヒョウゲン模索する連中が登場して、J-POPというカテゴリーにまるめられていった、というのが解釈としては適当かなぁ、という気がしてる。Spiral Lifeには、渋谷系とJ-POPの狭間にあるミッシングリンク*2的な印象を僕は持っております。

だけど、渋谷系年表で名前載ってなくて、別冊宝島でも完全にスルーされてたら、寂しく思うけどね。嗚呼、矛盾してる……。

しつこいですが、未だ続きます。文献探し中。実家におきっぱなしだったけかなぁ……。

*1:http://mmcs.edhs.ynu.ac.jp/~askaw/sotsuron/6_shou_4.html近辺を参照されたい。

*2:歴史的な進化の過程から外れイレギュラーな進化を遂げた存在。手塚治虫の『三つ目がとおる』のイースター島のエピソードを参照されたい。