教室を抜けると、そこは何時か見た路地だった。

http://redg.info/~karazemi/index.html

http://www.asahi.com/national/update/0129/030.html

id:gleam:20050130#1107013792

という訳で、横浜国立大学教授唐十郎の最終講義に行ってきました。やはり、自分の大学生活は、唐十郎、そして唐ゼミ周辺を抜きにして語れないんよな。と再認識させられた感じでありました。はぃ。

イベント自体は、ゲストとして招かれた演劇評論家扇田昭彦氏のフリを一切飲み込む天才鬼才、唐さんのエネルギーの凄さが迸った印象でした。唐さんの振り返る大学関連の殆どのエピソードの周縁は知っているだけで「あー。」と苦笑って頷くだけなんだけど、それも改めて彼の口から語られると何か、重大な何かがそこに潜んでたよな気にさせてくれちゃう。天才に許されたマジックだなこれは。と思いつつ、ぼんやり眺め、笑う。結局、教授唐十郎の話を引き出すことに居心地の悪くなった扇田さんは、私的な最大の関心事であろう過去の状況劇場への回想モードのインタビューや、現在の唐の活動へと話を逸らし、その回答に換えて、最後は唐さんが自身の演劇観を、僕が学生当時目の当たりにした授業さながらにまくし立て終えるという、唐教授らしいと言えば間違いなく唐教授らしい「講義」でした。

その後、唐ゼミによる過去全公演のダイジェスト再演。コレは相当良かった。1期生が演じていて当時、現在の中核メンバーは関わっていなかった『24時53分「塔の下」行きは竹早町の駄菓子屋の前で待っている』の冒頭を、今のメンツで中野演出で再演する、というアジなことをやった後、延々過去の名シーンをVTRを交え再演。いけなかった公演が「行きたかった」公演だったことを再認識して、唸る。3月頭に大阪で実施する唐フェスで再演するらしい『少女都市からの呼び声』を観に、近大まで行こうかと思ってしまったぐらいだ。や、ホントにいくかもしれない。或いは、唐ゼミ解体後の中野達が、再演することを祈るのみだ。

過去の公演の再演を観てつくづく思ったのが、役者の成長ぶりのすさまじさだ。特に、椎野、禿、渡辺さん辺りのマルチ同期の役者さん、共演したこともある前田君の成長ぶりを、過去のシーンを再現することで、まざまざと見せ付けられた。このシーン、こんなだったけ?て錯視を何度も覚えた。再演であって、再演ではなかった。観たことないものさ、あんな空間。良いとこどりのダイジェストだったてこともあるんだろうけど、やっぱり昔観たモノと、何か決定的なモノが違う気がした。

そして、彼らにそこまでの特権的肉体(とあえて呼ぶ)を与えたのは、中野という、これまた同期の、素晴らしい演出家だった。彼の成長なくして、役者の成長は有り得なかった。昔からすごいやつだったけど。何せ、今では唐さんも室井さん辺りも知ってる笑い話だけど、入学直後に「唐組を乗っ取る」のが野望だと宣言したオトコだったんだから。その後、当時唯一の学内劇団三日月座、中野が主宰し半年2回公演で駆け抜けた幻の(笑)八秒台劇場での活動を経て、今の快進撃と至る。その大体を、一時期は当事者になりながら観察してきた身としては、なかなか感慨深いモノもある一連の再演でした。

ところで、今日張り紙してあった大学新聞のインタビューで、中野は自分にとって唐さんとは何かと問われ「<神>ですね。天才です。」と答えてた。嗚呼、父権的。と苦笑しつつ、実際、中野はそれに近づこうとしても、結局凄い新作をハイペースで未だ書き続け賞なんかとったりして再評価されつつあり、遠ざかってく一方の唐さんに、相当のコンプレックスを抱えているんだと思う。まさしくオイディプスコンプレックス、てやつか。「何時の間に巻き込まれてた。」とか新聞のインタビューでは煙に巻いてるけど、実はコンプレックスこそが、彼を唐演劇へと志向させたモノの正体、という気がする。けどその唐さんへの絶対的なコンプレックスが、結果として、演出家である自身と、稽古をつけ続けた役者達を成長させる源泉となったのだろうなぁ。とかなんとか。そんな僕も唐さんへのある種のコンプレックスみたいのは、あるんだと思います。

という訳で、もうじき「横浜国立大教授唐十郎」とその研究室であり劇団である「唐ゼミ」は終わりを告げようとしている。これを期に、主観的に唐らを目撃するのではなく、客観的に「観客として」唐らを目撃できる唐十郎、旧唐ゼミの1ファンに戻りたい。とまぁ、長文の末、私的なシメな訳ですが。て、ココの文章で私的でないものがあるのかと問われると、ビミョウな気はするのだけども。はっはは。まぁ最期だから、てことで、許して欲しいです。はぃ。授業で唐さんから質問のサクラ頼まれたとか、唐研究室のカーテン焦がして唐さんに高円寺まで謝りにいったとか、今だから暴露できる幾つかの笑い話を思い出しつつ。いやはや。なんともはや。時間がたつのは、こんなにも速いものか。長文駄文、失礼致しました。

ところで一番聴きたいことを扇田さん聞いてくれなかった。8公演を駆け抜けてみせてくれた劇団唐ゼミの面々は今後どうなんでしょう?彼らが演劇をやめることは、考えられないからなぁ。公費で買った青テントの行方も木になる。資産譲渡?