別離。

『バスルーム寓話』-おかざき真里

寓話、と言うだけあって、ちょっと不思議な御噺を集めた短編群。モチーフは一環として「別れ」。幾つかの物語は「出逢い」の描写が余りに鮮やかな分だけ、それが持ちうる諸々を彫り起こすことに成功してる。淡々としつつも精緻な線描がキレイに伏線として嵌っている場面が多い。

結果描かれるのは巡り戻ってく時間。過去形と現在形を往復し、現在に還ってく物語。02年作品を読んだときには、ちょっとした生ぬるさというか停滞感を感じたのだけど、95〜96年に描かれたこれら初期作品はそゆ生ぬるさを吹っ切って描き切ってる感がある。大事にしたいと思わせてくれた、そんな1冊。